経営戦略・中期経営計画

中期経営計画が現場で実行されない7つの原因|計画を「経営のOS」に変える方法

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

計画はあるのに進まない。そんなとき、私は社員の意識を問う前に、誰が何を進めることになっているかを確認します。担当者に時間と権限はあるか。止まったときに、経営陣が判断する場はあるか。計画と普段の仕事の間を見直していきます。

計画が立派でも、担当者、予算、日々の確認に反映されていなければ、現場は動きにくいと思います。私は、社員の意識を問う前に、計画どおりに進められる条件が揃っているかを見ます。

図解:実行されない計画と、実行される計画の違い

実行されない状態 実行される状態
重点テーマが10個以上 3〜5個に絞る
「部門で頑張る」 オーナーを1人決める
売上・利益だけを見る 先行KPIを見る
会議で説明する 差分原因と次の打ち手を決める
予算・採用・評価が別管理 戦略と資源配分を接続する
年度末に振り返る 月次・四半期で修正する

原因1:重点テーマが多すぎる

すべてを重要にすると、何も重要ではなくなります。経営レベルの重点テーマは3〜5個に絞り、それ以外は通常運営に落とします。

原因2:責任者が「会社」「部門」になっている

最終責任者を役割名または個人で明確にします。複数人責任は、実質的に責任者不在になりがちです。

原因3:KPIが遅行指標だけ

売上・利益は結果です。商談数、稼働率、継続率、採用充足率、プロジェクト遅延数など、結果を生む途中の指標を見ます。

原因4:会議が報告会になっている

数字の読み上げに時間を使わず、「計画との差はどこか」「なぜ起きたか」「次に何を変えるか」に集中します。

原因5:戦略と予算が別方向を向いている

重点戦略と言いながら、人員も予算も増えていなければ実行されません。戦略は資源配分とセットです。

原因6:評価制度が旧来の行動を強化している

新規事業を伸ばしたいのに既存売上だけで評価する、マネジメントを任せたいのに個人売上だけで評価する、といった矛盾があると現場は変わりません。

原因7:見直す場がない

計画は外れる前提で運用します。月次で施策を、四半期で戦略を見直す二層構造が実務的です。

30分でできる実行力診断

  • 重点テーマは5個以下か
  • 各テーマにオーナーが1人いるか
  • 先行KPIがあるか
  • 経営会議で差分と打ち手を決めているか
  • 重点テーマに予算・人員が配分されているか
  • 評価項目が戦略と矛盾していないか
  • 四半期ごとの計画修正があるか

YSKGのクライアントではどうだったか

※守秘義務の観点から、業種・規模・数値・時期など、事例の一部を特定できない形に一般化しています。

IT企業で、中計をKPI・組織・会議体までつないだ

あるIT企業では、組織再編や成長目標を掲げていましたが、日々の業務運営には旧来の考え方が残り、計画と現場の動きが十分につながっていませんでした。YSKGでは、中期の目標を全社KGI、部門KPI、役割・責任、会議体へ順番に落とし、何を見て、誰が判断し、どこで修正するかを整理しました。

特に、最初から精緻な指標体系を作り込むのではなく、仮のKGI・KPIに実際の数値を入れてシミュレーションし、運用できるかを確認しながら簡素化しました。さらに全社発表と新体制開始の時期から逆算し、各部門の宿題と決定事項を設定。中期計画を「年に一度見る資料」ではなく、経営会議で継続的に更新する仕組みに変えていきました。

よくある質問

Q1. このテーマに取り組むとき、最初に何から始めるべきですか?

計画にある重点施策を一つ選び、最後に何が決まり、いま何が止まっているかを確認してください。情報、権限、人手、優先順位のどこに問題があるかを分けます。

Q2. どのくらい作り込めば運用を始められますか?

一つの重点施策について、担当・必要な判断・次の行動・確認日が揃えば試せます。すべての部門の管理表を完成させるまで待つ必要はありません。

まとめ

進まない計画には、進まない理由があります。私は、叱咤する前に、その理由を具体的にしたいと思います。次の会議では、進捗率だけでなく『何を決めれば進むか』を聞いてみてください。

YSKGへのご相談

計画が形骸化している場合は、計画そのものよりKPI・責任・会議体の再設計から着手できます。

YSKGは、経営支援、組織・人事コンサルティング、経営者・管理職育成を行っています。計画、役割、人事制度を実際の仕事に合わせて見直し、実行と運用まで支援します。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

HRR株式会社(現 リクルートマネジメントソリューションズ)で人事コンサルティングに従事し、その後、事業会社で総務・人事部長、執行役員、取締役を経験。2019年にYSKGを設立。設立後は複数企業でCHRO、経営企画部長、コーポレート部長などを兼任し、経営と組織・人事の実務を支援。

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