経営戦略・中期経営計画

中期経営計画の作り方|作って終わらない「実行される経営計画」の設計方法

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

中期経営計画は、3年後の数字を並べる資料ではなく「何に集中し、誰が、いつまでに、どの指標を動かすか」を決める実行設計です。売上・利益だけでなく、重点戦略、KPI、組織、会議体まで一体で設計すると実行されやすくなります。

中期経営計画は、3年後の売上や利益を並べる資料ではありません。経営として「どこに資源を集中し、どの順番で変え、誰が責任を持つか」を決める実行設計です。

特に社員数が増え、事業や部門が複数になってくると、社長の頭の中だけで優先順位を共有することは難しくなります。計画の価値は、未来を正確に予測することではなく、会社全体の判断基準をそろえることにあります。

まず結論:中期経営計画は6つを一本につなぐ

設計要素 決めること 不十分だと起きること
① 到達点 3年後の売上・利益・顧客・事業・組織 数字だけが独り歩きする
② 戦略課題 現在地とのギャップ、最重要ボトルネック 施策が増えすぎる
③ 重点戦略 何に集中し、何をやらないか 優先順位が曖昧になる
④ KPI 何が動けば目標に近づくか 売上結果だけを追う
⑤ 組織・人員 誰が担うか、何人必要か 人が足りなくなってから採用する
⑥ 会議体 いつ差分を見て、何を決めるか 計画が年1回しか見られない

1. 「3年後の数字」より先に「3年後の状態」を描く

売上・利益の数字だけでは、現場は何を変えればよいか判断できません。顧客構成、商品・サービス、営業モデル、組織、人材、業務基盤まで含め、「今と何が違っているか」を言語化します。

たとえば「売上20億円」という目標だけでなく、「大型案件比率を高める」「社長が案件見積から外れる」「部門責任者が予算責任を持つ」「採用を年○名ペースで回せる」など、運営状態まで描くことが重要です。

2. 現在地との差を“戦略課題”に変える

SWOTを大量に並べても、経営課題は明確になりません。目標を阻むボトルネックを3〜5個に絞ります。典型例は、営業供給力、商品競争力、管理職不足、採用力、業務処理能力、資金制約です。

3. 重点戦略は「やること」ではなく「資源配分」で決める

戦略とは、施策のリストではなく優先順位です。人・お金・時間をどこに振り向けるかを決めます。重点テーマを絞り、責任者・期限・KPIをセットにします。

4. KGIからKPI、さらに行動へ分解する

「売上を増やす」はKPIではありません。たとえば売上を「商談数×受注率×平均単価」に分解し、さらに商談数を「ターゲット接触数×アポ率」に落とします。現場が動かせる数字まで降ろすことで、計画が日々の行動に接続します。

5. 組織・採用・育成を同時に設計する

3年後に必要な責任者が今いないなら、採用か育成か外部活用かを先に決める必要があります。特に管理職・専門職・案件責任者は、必要になってから育てても間に合いません。

6. 計画を経営会議の“OS”にする

月次ではKPIと打ち手、四半期では戦略の妥当性を見直します。計画と会議資料を別物にしないことが重要です。中計の重点テーマが、そのまま経営会議のレビュー項目になっている状態が理想です。

実務で使えるチェックリスト

  • 3年後の状態を数字と運営状態の両方で書ける
  • 戦略課題を3〜5個に絞れている
  • 重点戦略ごとに責任者・期限・KPIがある
  • 人員計画と採用・育成計画が中計に接続している
  • 月次・四半期のレビュー方法が決まっている
  • 「やらないこと」が明確になっている

YSKGのクライアントではどうだったか

※守秘義務の観点から、業種・規模・数値・時期など、事例の一部を特定できない形に一般化しています。

設備・工事会社で、目標を「必要な経営資源」に翻訳

ある設備・工事会社では、中長期の売上目標はあったものの、「その数字を実現するために何が足りないのか」が十分に分解されていませんでした。そこでYSKGでは、目標と現在地の差を、営業・見積、現場責任者、協力会社、設備、資金、管理体制といった経営資源の不足に置き換えて整理しました。

そのうえで、各資源を「社内でつくる」「外部から取り込む」「外部に出す」のどの方法で手当てするかを検討し、優先順位を決定。さらに、売上だけでなく案件数や責任者数などを年次マイルストーンに落としました。計画書を完成させることよりも、最初に手を打つ領域と着手時期を決めたことで、中期計画が具体的な経営課題の一覧として使える状態になりました。

よくある質問

Q1. このテーマに取り組むとき、最初に何から始めるべきですか?

まず現状を事実で可視化し、「どこで意思決定や実行が止まっているか」を絞ることです。いきなり制度やフォーマットを作るより、ボトルネックを特定してから設計した方が手戻りが減ります。

Q2. どのくらい作り込めば運用を始められますか?

最初から100点を目指す必要はありません。経営インパクトの大きい部分を優先し、60〜70点の状態で試行し、実際の運用データを見ながら更新する方が定着します。

まとめ

このテーマで重要なのは、個人の努力に依存せず、責任・判断基準・指標・会議・評価を一つの仕組みとしてつなぐことです。制度や資料を作るだけではなく、現場で使われ、経営判断が変わるところまで設計して初めて成果につながります。

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株式会社YSKGは、経営支援・組織人事・ビジネスコーチングの3領域で、個別テーマだけでなく相互のつながりを見ながら成長企業に伴走しています。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

リクルートマネジメントソリューションズで人事コンサルティングに従事した後、事業会社で人事部長・執行役員・取締役・CHRO・経営企画部長を歴任。2019年に株式会社YSKGを設立。事業推進と組織人事の両面から、月次の伴走型で成長企業の経営を支援している。

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