管理職・マネジメント

部長にPL責任を持たせるには|予算・権限・会議・評価の整え方

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

『部長なのだから、利益に責任を持ってほしい』。そう求めるなら、本人は何を変えられるのでしょうか。価格、人員、外注、業務の進め方。私は、損益の数字と、部長が判断できる範囲を一緒に確認します。

まず、自社が部長に期待しているのが、数値の説明、対応策の提案、予算内の実行判断のどこまでかを確認します。

本人が動かせる要因を分ける

部門の損益には、本人が決められない全社配賦や価格方針が含まれることがあります。それらを隠す必要はありませんが、部門長の行動を評価するときは分けて説明できるようにします。

項目 部長が動かせる可能性のある要因 全社で確認する条件
売上 顧客対応、提案、案件構成 全社価格方針、担当市場の変更
案件原価 工数、外注、手戻り、配置 全社共通の原価定義
人員費 採用計画、配置、育成 採用枠、報酬制度、異動の権限
共通費 利用量に応じて変えられる部分 配賦基準と変更理由
投資 必要性と効果の提案 決裁権限、資金配分

業種や職務によって動かせる範囲は異なります。部長の職務と合意した権限を基準に確認します。

予算を受け取るだけでなく前提を説明する

予算策定では、売上の構成、案件数、単価、必要人員、原価の前提を本人に説明してもらいます。経営者から目標が示される場合でも、その実現に必要な条件と、足りない資源を整理する仕事は残ります。

「達成します」で終わらず、採用が遅れた場合や大口案件が減った場合にどうするかも確認します。予算に合意することは、数値だけでなく実行条件に合意することです。

月次会議では差分から判断へ進む

会議で扱う順番 部長が説明する内容
実績と見込み 予算との差、年度末の見込み
原因 数量・単価・原価など、何が変わったか
対応案 何を変え、どの結果を見込むか
判断依頼 自分の権限では決められないこと
実行確認 担当、期限、次の確認指標

経営者がすぐ答えを出すと、部長は原因と対応案を考える機会を失います。本人の推奨を確認したうえで、前提やリスクを問い直す進め方が育成につながります。

評価は短期利益だけに偏らせない

利益だけを強く求めると、育成、品質、将来の案件につながる活動を削る誘因が生まれます。事業の段階に応じて、業績、組織能力、先行施策をどう扱うかを決めます。

評価項目を増やすほどよいわけではありません。結果、本人が担う改善、将来への投資のうち、重要なものを選び、比重と証拠を明確にします。

YSKGのクライアントではどうだったか

IT企業の公開事例では、全社KGIから部門KPI、役割・責任、会議体を順に整理し、役職ごとにKGIとKPIの比重を変える評価設計を検討しました。部門に期待する責任と、日々見る数字を接続する取り組みです。

この事例は部長のPL責任導入の効果を直接示すものではありませんが、数値、権限、会議、評価を同じ役割から考えるうえで参考になります。

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よくあるご質問

数字が苦手な部長には何から始めてもらえばよいですか

担当事業の売上と主な費用を、実際の仕事に対応させることから始めます。全勘定科目を学ぶ前に、自分の判断で変わる項目を説明できるかを確認します。

部門の損益をまだ集計できていません

売上と主要原価など、意思決定に必要な範囲を先に定義します。精密な配賦を急ぐより、数値の意味と更新担当を揃え、利用上の限界を明示して試行する方法があります。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

HRR株式会社(現 リクルートマネジメントソリューションズ)で人事コンサルティングに従事し、その後、事業会社で総務・人事部長、執行役員、取締役を経験。2019年にYSKGを設立。設立後は複数企業でCHRO、経営企画部長、コーポレート部長などを兼任し、経営と組織・人事の実務を支援。

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