組織設計・成長ステージ

社長に集まる承認をどう減らすか|決裁権限表の設計例と移行手順

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

社長に集まる承認を減らすには、承認する金額だけでなく、判断の条件、例外、他部門への影響、報告の方法を決めます。「任せる」と伝えても、どこまで決めてよいかが分からなければ、担当者は従来どおり社長に確認します。

最初の作業は、直近の承認事項を書き出すことです。繰り返し発生するもの、例外が多いもの、社長にしか判断できないものを分けます。

決裁と相談と報告を分ける

決裁は実施を認める判断、相談は判断に必要な意見を得る行為、報告は実施内容や結果を伝える行為です。これらをすべて事前承認にすると、社長が詳細を確認し続けることになります。

以下は説明用の設計例です。金額や契約のリスク、既存規程に合わせて変更してください。

対象 担当者・部門長が決める条件 事前に上位者へ上げる条件 事後に共有すること
通常の発注 承認済み予算内、標準条件内 予算超過、契約条件の例外 発注額と予算残
案件の要員配分 部門内で納期・品質を維持できる 他部門の負荷や重要案件に影響 配置と見込み工数
顧客への追加対応 合意した対応範囲内 無償対応の拡大や納期変更 合意内容と採算への影響
採用 合意済みの役割・予算内の選考 計画外増員、条件の例外 選考状況と充足見込み

少額でも法務・情報管理・信用に関わる案件は、金額だけで現場決裁にしないことが重要です。複数回に分けた発注など、形式的に条件を満たしても全体では範囲を超える場合の扱いも定めます。

一つの領域から移譲を試す

最初からすべてを任せず、判断の件数が多く、条件を説明しやすい領域を選びます。初期は担当者が推奨案と根拠を出し、社長が確認します。判断のずれが分かれば、基準を補います。

次に、合意した範囲は担当者が決め、定例で結果を振り返ります。例外や重大な懸念が出た場合は、どのタイミングで上げるかを決めておきます。確認の回数を減らすかどうかは、件数だけでなく判断の質を見て決めます。

社長が判断を引き取る場面を減らす

任せた後に社長が好みだけで結論を変えると、担当者は次回からまた確認するようになります。基準に沿って判断しているなら、異なる選択であっても、理由と結果を振り返る対応が必要です。

一方、重大な損失やルール違反につながる懸念は、その場で対応します。介入した理由を明確にし、どの条件に該当したかを判断基準へ戻します。

YSKGのクライアントではどうだったか

公開している設備・工事会社の事例では、社長が営業、見積もり、重要案件の判断に深く関わっていました。YSKGは、見積もりの分担や外部化、現場責任者の育成、判断基準の明文化を検討しました。

この事例で承認件数が何件減ったかは公表していません。参考になるのは、社長の仕事を単に渡すのではなく、分担と育成と判断基準を合わせて扱った点です。

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よくあるご質問

社長が確認しないとミスが増えませんか

判断材料と権限をセットで渡し、試行期間に基準を揃えます。最初から確認をなくすのではなく、事前確認から事後の振り返りへ段階的に変える方法があります。

決裁権限表を作っても使われません

実際の承認案件に表を当てはめ、判断できない箇所を探してください。例外時の連絡先が不明、社長が別ルートで判断するなど、表の外の運用が原因になることもあります。

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株式会社YSKGは、経営支援・組織人事・ビジネスコーチングの3領域で、個別テーマだけでなく相互のつながりを見ながら成長企業に伴走しています。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

リクルートマネジメントソリューションズで人事コンサルティングに従事した後、事業会社で人事部長・執行役員・取締役・CHRO・経営企画部長を歴任。2019年に株式会社YSKGを設立。事業推進と組織人事の両面から、月次の伴走型で成長企業の経営を支援している。

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