事業推進・KPI・管理会計

受託開発と制作会社で売上が伸びても利益が残らない理由

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

受託開発や制作会社で売上が伸びても利益が残らないときは、受注量だけでなく、案件ごとの作業量と費用、追加対応、引き継ぎを確認します。営業は受注額、制作は品質、管理は請求を見ていても、それぞれが持つ情報をつながなければ、案件全体の採算は見えません。

まず、売上と案件に直接かかる費用の定義を揃えます。以下では、管理上の確認のため、売上から外注費、直接経費、社内工数に基づく原価を差し引いた値を「案件採算」と呼びます。決算上の売上総利益と一致するとは限りません。

同じ売上でも作業量が増えると採算は変わる

架空の案件例 見積もり時 完了時
売上 500万円 500万円
外注費・直接経費 100万円 120万円
社内工数 600時間 900時間
社内原価 単価5000円で計算 300万円 450万円
案件採算 100万円 −70万円

上記は仕組みを説明する仮例であり、YSKGの顧客実績や業界標準ではありません。売上が変わらなくても、工数と外注費の増加で採算が逆転する様子を示しています。工数単価に含める費用は社内で定義し、経費を二重計上しないようにします。

差が生じた段階を分ける

見積もり時の想定不足、契約後の追加要望、社内の手戻り、人員配置の変更では、対策が異なります。赤字案件を一括して「現場の生産性が悪い」と扱うと、受注条件や仕様変更の問題を見落とします。

差が生じる場面 確認する記録 改善する判断
見積もり 作業範囲、前提、レビュー内容 受注前に誰が工数を確認するか
契約・着手 契約範囲と現場への引き継ぎ 不明点を解消して着手できるか
追加対応 変更内容、追加工数、顧客との合意 再見積もりや納期調整の要否
制作・開発 計画工数、実績、残作業見込み 完了前に配置や進め方を変えるか
振り返り 最終採算と差分の理由 次の見積もり前提を更新するか

完了前に残作業の見込みを確認する

実績工数だけでは、これから赤字になる案件に気づきにくいことがあります。「これまで使った工数」に「完了まで必要な見込み工数」を加え、見積もりとの差を確認します。

追加要望が発生したときは、現場の善意だけで引き受けず、契約範囲、顧客との関係、採算への影響を見て判断します。誰が顧客へ確認し、誰が社内で例外を承認するかを決めておくことが大切です。

評価で部門間の問題を悪化させない

営業を受注額だけ、現場を納期だけで評価すると、採算や追加作業が後回しになる場合があります。ただし、案件採算を全員に同じ比重で負わせればよいわけでもありません。

見積もりを承認する人、変更を管理する人、作業品質を担う人の責任を分け、それぞれが動かせる行動を確認します。品質低下を伴う工数削減や、実績工数の未記録が起きていないかも合わせて見ます。

YSKGのクライアントではどうだったか

公開している制作会社の事例では、複数部門が関わる案件で、受け渡しや承認のタイミングが曖昧でした。YSKGは問い合わせから振り返りまでをフェーズに分け、部門をまたぐ受け渡しと決裁ポイントを業務フローとして設計しました。

この事例で利益改善額は公表していません。参考になるのは、採算管理の前提となる「どの段階で誰が判断するか」を整えた点です。

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よくあるご質問

工数管理システムの導入が先ですか

まず、何を記録し、どの判断に使うかを決めます。一部案件で簡単な表から試し、必要な記録粒度と運用負荷を確認する方法があります。

赤字案件は受注しない方がよいですか

戦略的な理由で受注する判断もあり得ます。その場合は、期待する価値、許容する負担、判断者、見直し条件を明示し、通常の案件採算と分けて管理します。

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株式会社YSKGは、経営支援・組織人事・ビジネスコーチングの3領域で、個別テーマだけでなく相互のつながりを見ながら成長企業に伴走しています。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

リクルートマネジメントソリューションズで人事コンサルティングに従事した後、事業会社で人事部長・執行役員・取締役・CHRO・経営企画部長を歴任。2019年に株式会社YSKGを設立。事業推進と組織人事の両面から、月次の伴走型で成長企業の経営を支援している。

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