経営人材・後継者育成

後継者に経営を任せるまでの育成計画|事業計画と経営会議を使う方法

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

後継者に経営を任せるには、必要な知識を学ぶことと、実際の資源配分や人材に関する判断を経験することの両方が必要です。育成計画には、研修の日程だけでなく、本人が決める仕事、現経営者が確認する場、権限を広げる条件を入れます。

ここでは経営能力と運営体制の育成を扱います。株式や税務、法的な承継手続きは別の検討事項です。

最初に任せたい経営の仕事を定義する

「社長らしくなってほしい」では到達点が分かりません。どの顧客や事業を重視するか、どこへ人とお金を配分するか、幹部へ何を任せるかなど、判断する仕事に分解します。

本人の経験によって、部門の計画から始める場合も、全社の計画を扱う場合もあります。現在の役割から離れすぎた課題を渡さず、必要な情報と関係者に接する機会を確保します。

六か月の育成計画の例

以下は計画の例です。六か月で経営を全面的に任せられることを保証するものではありません。

期間 実務の題材 本人が行うこと 経営者が確認すること
1か月目 現状の事業と損益 顧客、収益、主要課題を説明する 認識の違いと情報不足
2か月目 次期の事業計画 目標、前提、必要資源を提案する 前提と優先順位
3か月目 一つの改善施策 範囲内で決め、担当者と進める 判断過程と部門間連携
4か月目 予実レビュー 差分と対応案を経営会議へ出す 修正のタイミングと根拠
5か月目 要員・役割の見直し 幹部への期待と分担を提案する 任せる範囲と説明
6か月目 実行結果と次期計画 学びと次の打ち手を説明する 次に渡す権限と継続支援

事業計画を数字合わせにしない

計画では、目指す状態から必要な売上・利益・人員を考えます。到達点と現状との差を見て、採用、育成、外部活用、投資の選択肢を検討します。

外部支援者や管理担当者が計算を手伝っても、優先する事業や許容するリスクは本人が説明します。資料が完成したかより、本人が前提と選択理由を話せるかを確認します。

経営会議を判断の練習にする

本人には、事実、困っていること、対応案、推奨する判断、必要な決裁を整理してもらいます。会議では、現経営者が答えを先に出す前に、本人の判断を聞きます。

採用しなかった案があるなら、その理由も確認します。結果が予想と違った場合は、本人を責めるだけで終わらず、どの前提をいつ修正できたかを振り返ります。ただし、重大なリスクについては事前に相談する条件を設けます。

幹部との関係も移行の対象にする

後継者が決めたことを、幹部が後から現経営者に確認し、判断が覆る状態では権限移譲が進みません。誰が何を決めるかを社内へ説明し、相談が来た際の対応を現経営者と揃えます。

幹部の知見を生かすことと、最終判断を曖昧にしないことを両立させます。担当領域を決めるだけでなく、対立した際の判断の場も置きます。

YSKGのクライアントではどうだったか

ある経営者育成の資料では、事業計画、管理担当者との役割分担、経営会議の議案を、一つのセッションで扱う構成を用意しました。説明する資料と記入するワークを分け、本人が方針や担当・期限を決める進め方を設計しています。

ここで確認できるのは育成の設計であり、承継完了の実績ではありません。実務の判断を育成の題材にする方法としてご紹介しています。

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よくあるご質問

親族以外の後継者にも使えますか

役割、判断、実行、振り返りを設計する考え方は活用できます。本人の経験と既存幹部との関係に合わせて、任せる範囲や進め方を調整します。

現経営者が忙しく育成時間を取れません

日々の経営会議や事業計画の検討に、本人が提案して振り返る時間を組み込む方法があります。ただし、方針や重要な判断、権限移譲は経営者が関与する必要があります。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

リクルートマネジメントソリューションズで人事コンサルティングに従事した後、事業会社で人事部長・執行役員・取締役・CHRO・経営企画部長を歴任。2019年に株式会社YSKGを設立。事業推進と組織人事の両面から、月次の伴走型で成長企業の経営を支援している。

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