人事制度・組織開発

IT・Web企業の評価制度|エンジニアと管理職を同じ物差しで評価してはいけない理由

執筆:山口 剛志(株式会社YSKG 代表取締役)

IT・Web企業では、専門性を深める人と組織を率いる人を同じ昇格ルートにすると、優秀な専門職が望まない管理職になる問題が起きやすくなります。役割軸と報酬軸を分けた複線型設計が有効です。

IT・Web企業では、エンジニア、デザイナー、PM、営業、管理職を同じキャリア観で評価すると歪みが出やすくなります。特に「上位等級=管理職」という単線型制度は、専門性の高い人材に不自然な昇進を迫ることがあります。

図解:管理職ルートと専門職ルートを分ける

観点 マネジメント職 専門職
主な成果 チーム成果、組織能力 高度専門成果、技術的影響
人材責任 採用・育成・評価 原則なし/限定的
意思決定 人・予算・優先順位 技術・設計・品質
上位職 部長・VP Principal・Staff等
評価 組織KPI+行動 専門成果+影響範囲

1. まず職種ごとの価値創出を分ける

営業は売上、PMはプロジェクト成果、エンジニアは技術成果・品質・生産性など、価値の出し方が違います。共通バリューは持ちつつ、成果指標を分けます。

2. 「マネージャーにならないと給与が上がらない」をなくす

専門職で高い貢献をする人が、報酬上限のためだけに管理職になると、本人・組織双方に損失が出ます。専門職の上位レンジを管理職と同等に設計します。

3. 技術力だけで上位等級にしない

上位専門職には、難しい課題を解く力だけでなく、レビュー、標準化、後進支援、全社技術への影響などを求めます。

4. PM・EM・Tech Leadの役割を明確にする

IT組織ではタイトルが似ていても責任が重なりやすいため、人・プロジェクト・技術の最終責任を分けます。

5. 評価会議で職種間の“見えやすさ”を補正する

営業の数字は見えやすく、バックエンドや基盤改善は見えにくいことがあります。多面評価や実績証拠、キャリブレーションで補正します。

評価項目例

職種 成果 行動・影響
エンジニア 品質、生産性、技術課題解決 レビュー、標準化、育成
PM QCD、顧客価値、プロジェクト成果 合意形成、リスク管理
EM チーム成果、人材成長 採用、配置、1on1、改善
デザイナー UX成果、品質 リサーチ、協働、再現性

YSKGのクライアントではどうだったか

※守秘義務の観点から、業種・規模・数値・時期など、事例の一部を特定できない形に一般化しています。

IT企業で、組織・役職によってKGI/KPIの比重を変える設計

あるIT企業では、全社員を同じ指標で評価すると、職種や役職によって自分では動かしにくい数値が含まれる問題がありました。YSKGでは、全社成果を表すKGIと、各部門・現場が動かせるKPIを分け、役職ごとにその比重を変える案をシミュレーションしました。

さらに、AI活用など今後強化したい戦略テーマはKPIの中に明示的なウェイトを持たせる一方、項目が増えすぎないよう既存項目を削減しました。IT・Web企業の評価では「全員共通のきれいな制度」より、職種・役割と会社戦略の両方に合わせて設計することが重要です。

よくある質問

Q1. このテーマに取り組むとき、最初に何から始めるべきですか?

まず現状を事実で可視化し、「どこで意思決定や実行が止まっているか」を絞ることです。いきなり制度やフォーマットを作るより、ボトルネックを特定してから設計した方が手戻りが減ります。

Q2. どのくらい作り込めば運用を始められますか?

最初から100点を目指す必要はありません。経営インパクトの大きい部分を優先し、60〜70点の状態で試行し、実際の運用データを見ながら更新する方が定着します。

まとめ

このテーマで重要なのは、個人の努力に依存せず、責任・判断基準・指標・会議・評価を一つの仕組みとしてつなぐことです。制度や資料を作るだけではなく、現場で使われ、経営判断が変わるところまで設計して初めて成果につながります。

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株式会社YSKGは、経営支援・組織人事・ビジネスコーチングの3領域で、個別テーマだけでなく相互のつながりを見ながら成長企業に伴走しています。

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山口 剛志株式会社YSKG 代表取締役

リクルートマネジメントソリューションズで人事コンサルティングに従事した後、事業会社で人事部長・執行役員・取締役・CHRO・経営企画部長を歴任。2019年に株式会社YSKGを設立。事業推進と組織人事の両面から、月次の伴走型で成長企業の経営を支援している。

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